ナイトウです。
今回は、言葉と関係性と商売についての
お話です。
資本主義において、
問題解決する側に価値があり、
そして、その価値を提供する側は
一方的にルールを提示し、
それに合意したお客さんに対して、
都合の良いビジネスを展開することができる、
という側面が存在します。
これは口すっぱく
お伝えしてきていることです。
ですから、一方的にルールを提示し、
都合の良いお客さんだけを選び抜き
お金儲けができてしまう、ということに
気づき、味をしめた人たちにとっては
この上ない楽な道だと思うのですが、
この形は、今の時代では長続きはしませんし、
本来の商売として考えた時に、
必ずしも美しい形とは限りません。
結局それは、
価値を提供する側と、価値をもらう側の
関係性をどんな風にデザインして行くか?
という話で決まってくるものです。
例えば、
お店に入って来た時に、
お客さんに使う言葉1つ取ってもそうです。
「いらっしゃいませ」
というのか
「こんにちは」
というのか。
たった一言でも関係性は変わってきます。
これは、「売る側」と「買う側」の関係性を
売る側がどんな風に仕掛けて行くか?
という問題に他なりません。
例えば、
「いらっしゃいませ」
これは、一見さんなら、
よく使う言葉ですが、
ある程度、知った中なら、
「あ、ナイトウさん、こんにちは。」
となる方が、コミュニケーションとしては自然です。
「いらっしゃいませ」
という言葉を使うな、という話ではなく、
この一言でも、
搾取する側(お金を奪う側)
搾取される側(お金を取られる側)
という対立関係は生み出す可能性がある
という話です。
僕が京都に住んでいた頃、
行きつけの喫茶店があったんですが、
そこの店主は僕が顔を出すたびに、
「いらっしゃいませ」
の後に必ず、ちょっとした会話をしたものです。
「ナイトウさん、今日は一人なんですね。
いつもの席空いてますよ!」
みたいな話でコミュニケーションが
始まって行くわけですが、
全く知らない喫茶店に行くよりも
ずっと心地の良いものです。
これは単に、
お金を奪う側と取られる側という
対立関係ではなく、
良いものを提供しようとする側と
良いものを楽しもうとする側の
協調関係です。
喫茶店の例だとまだ協調関係の
イメージは湧きづらいかもしれませんが、
小料理屋で店主と雑談をしていて、
今、旬のものを紹介された、
という感じであれば、まさに、
「良いサービスを提供しよう」
という発想に他ならないでしょう。
「ビジネス」というと、
横文字でカッコ良い感じがしますが、
フリーランスで活動している、
クリエイターとして活動しているというのも、
やっていることは
立派な「商売」です。
商売というのは、
基本コミュニケーションが
前提なので、
どんな言葉を使い
どんな関係性を作って行くのか?
を本当は相当意識した方が良いと思うのです。
他にも・・・
例えば、よくあることで言えば、
「かしこまりました!」
という言葉も同じです。
クリエイターというと、
どうしても請負というポジションを
取らざる得ない状況も多くあると思うのですが、
「かしこまりました」
「承りました」
という言葉も状況によって
変えていきたいものです。
これらの言葉は
確かにお客さんや目の上の人向けに
使う言葉ですが、
仮にチームとして組み、
対等の立場で仕事をする場合、
なんでもかんでも、
「かしこまりました」
という言葉は、
自分から立場を勝手に作り出すものです。
自分が下で、相手が上。
もし相手が「対等だ」という意識で
動いていたとしても、
人間は言葉や雰囲気に流される傾向があります。
知らず知らずのうちに、
対等だった立場が、上下関係になっていた
なんてことも実際の現場ではよくあることです。
こんな風に、言葉から生み出される関係性は
無意識レベルで影響があるからこそ、
僕らは商売において、
言葉と関係性を普段より
意識して行く必要があるのでは?
と思うのです。
ルールを一方的に定めることができる
だったら、「俺の都合でやればいいじゃん。」
という、ルールの押し付けではなく、
「ルールをどう相手にプレゼントするか」
という発想で考えられないか。
「そのルールの上で、どんな風に
自分のサービスを楽しませることができるか?」
という発想で考えられないか。
メニューを提示する時に、
曖昧にせず、
「わかりやすく具体的に提示できないか?」
限定性という時に、
煽るために使うのではなく、
「熱く語ることはできないか?」
そんな風に考えることができれば、
同じ商売をする、でも、
ルールを設定する、でも
メニューを提示する、でも
言葉をかける、でも
思いやりのあるような
動き方ができるのではないか?
と思うのです。
お金稼ぎやお金のことばかりに
フォーカスが行くと、
だいたいおかしくなることが
ほとんどです。
ルールを設定するのは、
「自分を守る」という
大前提は存在していますが、
あくまで大前提であって、
それ以上に、相手をどう楽しませるか?
どんな風にサービスを最もよく提供できるか?
を常にブレずに提供して行くためにあるものです。
ごく稀に、自分を守ることにフォーカスを置きすぎて、
お客さんをおざなりにする商売をしている人を
見かけますが、少なくとも僕はそれを美しいとは言えません。
しかもだいたいそういう人に限って、
過去に自分が消費者側や請負としてやられていて
苦い経験があるにもかかわらず、
いざ、自分が価値提供側になり、
美味しい思いを知ってしまった途端に、
同じことをしてしまうものです。
ですから、
「自分が辛いから、このルール設定をしよう」
という最低ラインの土台があった上で、
どれだけ言葉を尽くし、
関係性をうまく作り出して行くか?
が僕らクリエイターやフリーランスが
徹底すべき部分だと思いますし、
常に
「自分は間違っているのではないか?」
という、疑いと反省を持っている方が
健全でいられるはずです。
お客さんと対立するのか
お客さんと協調するのか
たったこの2つの違いですが、
意識だけで変わってくるものです。
僕も日々気をつけたいと
思っていることの1つなので、
ぜひ頭の片隅に、忘れずに置いておきましょう。